昨年の話です。
大変魅力的なダンサーに出会い、創作舞踊の振付をさせて頂きました。
モチーフにしたのは、遠藤 周作著 『沈黙』です。

隠れ切支丹の間で、口伝えのみで長い間守られてきた、祈りの言葉 “オラショ”をそのままタイトルにしました。

語源は、ラテン語の oratio ー祈祷ーという意味ですが、研究の結果、オラショはグレゴリオ聖歌が原曲であることがわかっています。

厳しいキリスト教弾圧の最中、異国の宣教師から教わったグレゴリオ聖歌を、隠れ切支丹達はひっそりと集まっては唱え続けてきたそうです。
踏み絵を踏まずに処刑されることよりも、その祈りを生きる力に変えたのですね。
その間400年。
なんと力強い信仰でしょう。

長崎の生月島(いきつきしま)の長老達によって守られてきたオラショは、原曲のグレゴリオ聖歌の言語を、信じられない割合で正確に保っているそうです。
それほどまでに、人の心を掴んだキリスト教の魅力とは一体どんなものだろうか…と、当時の隠れ切支丹達の純粋さに思いを馳せたものです。

この信じる力の強さに心を揺さぶられ、祈りを生きる力に変えた人の物語を作品にし、私のミューズであるダンサーに踊ってもらいました。

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彼女がこの難しい課題に取り組む姿を見ながら、ダンサーにとっては踊ることが生きる力になるのだなぁと思いました。
踊りに限らず、好きなことは生きる力に直結するのではないでしょうか。
好きなことに向かって、一心不乱に取り組む人間の姿は、本当に美しいものです。
技術は結果としてあがっていくかもしれませんが、その前提には心から好き!という気持ち。
これを我慢するのが良いとされる社会には、どうしてもなって欲しくありません。

踊りや芸術は、多くの力を生み出します。
その人にしかできない、価値あるものなのです。
次作の江ノ島の女神達をモチーフにした作品も、やはり祈りや信じる力をテーマにしています。
踊りたい!と、全身で叫んでいるかのような素晴らしい生徒さん達に囲まれ、力強く、私もまた今日という日を生きています。

公演は2019年 11月29日 金曜日
太田区民プラザ 大ホールにて
Yuko Ballet Foundations   
The First Art Festival